※この記事は,日本エネルギー学会機関誌えねるみくす第99巻第4号(2020),廃環境技術会誌2021年10月号,日本鉄鋼協会誌「ふぇらむ」第24巻第12号(2019)への寄稿を元に編集しました.
人為的CO2排出源のマクロな構造と削減技術の方向性
1.炭素循環と人為的CO2排出源の概観
国連サミットでの「持続可能な開発のための2030アジェンダ」の採択から6年が経過し,SDGs(Sustainable Development
Goals,17の持続可能な開発目標)も浸透してきました.2 ℃や1.5 ℃などの世界全体の平均気温上昇の抑制目標値には気候感度の不確実性からさまざまな議論があるものの,パリ協定の第4条の「今世紀後半に人為起源の温室効果ガスの排出量と吸収源による除去量とのバランス」は,最終的な到達目標として持続可能性(Sustainability)を謳っています.非常に多くの科学的根拠の基に,世界的な気候変動の主要因が人為起源の温室効果ガス(GHG)排出である可能性は,IPCCの評価報告書が改訂される度に高められてきており,2021年8月に発表されたAR6では,“It
is unequivocal that human influence has warmed the atmosphere, ocean and
land.”と「疑う余地がない」と断定されています.最新の地球全体の炭素循環(The global carbon cycle,図1) によると,自然現象として大気と陸域・海洋でそれぞれ100
GtC/y程度の吸収と放出(メタン等を含む)があり,土壌や海底堆積物,海洋中に溶解したCO2(イオンを含む)などを巨大なCarbon sinkとして均衡を保って状態です.現在は,化石燃料の酸化によるCO2(9.4
GtC/y)や森林農地化・都市化に代表される土地利用の変化(1.6 GtC/y)などの人為起源の大気放出と吸収(陸域・海洋で+5.9 GtC/y)が重なって,大気中のCO2は5.1
GtC/y(2010~2019の平均値)蓄積しており,持続可能とは到底言えない状態にあります.

図1 地球全体の炭素循環,Pierre Friedlingstein, et al.: Earth Syst. Sci. Data, 12,
3269–3340, (2020).
国立環境研究所温室効果ガスインベントリオフィス(GIO)によると,2019年度(2021年4月公開,図2)の国内GHG排出量はCO2換算で1.21Gt,そのうち91.4%がCO2でした.CO2は93%のエネルギー起源の他,非エネルギー起源もありますが,温室効果ガスの圧倒的な主要因は84.9%を占めるエネルギー起源のCO2ということに変わりはありません.
それでは一旦CO2から離れてエネルギーに視点を移しましょう.パリ協定の約束草案の基準となる2013年のエネルギーフローでは,再生可能エネルギーや原子力などの非化石は1.64
EJ(エクサジュール=1018 J)を含む21.02 EJの一次エネルギーの供給がありました.このうちの9.30 EJが3.84 EJの電力に変換され,家庭,業務,産業および運輸の各部門の電力需要に供給,残りは直接的に需要端で利用されています.前述のGIOの部門別のCO2排出量では,エネルギー転換部門(電気事業者と熱供給事業者)が39.1%を占めます.エネルギー転換部門は最低限の自家消費を除き,全て他部門に電力や熱を送出していることから,最終需要端へのエネルギー転換部門のCO2の再配分前後を比較すると,運輸部門やその他はほぼ変わりませんが,業務および家庭部門では大幅に増加します.すなわち,エネルギー需給構造から見てCO2排出量は,家庭・業務など民生部門ではエネルギー転換部門の一次エネルギー源の影響を大きく受け,運輸部門では当該部門が直接調達する一次エネルギー源でほぼ決定されていると言えます.産業部門については,受電電力が主なユーティリティの場合は民生部門に準じますが,高温熱プロセスを抱える場合は運輸部門に近くなり,独自の構造を持っていると見られます.

図2 GHG排出の推移と電気・熱配分前後の部門別比較
次に,化石燃料の炭素フローを追ってみましょう.2017年度の総合エネルギー統計から,天然ガス,石油,石炭の炭素ベース換算したフローを図3に示します.国内の一次エネルギー供給は336,926
kt-C/y(以下単位省略)であり,そのうち,石油および石油製品が146,147で最も多くなっています.発電や熱供給用のエネルギー転換が約1/2で,運輸・家庭・業務で残りの炭素が利用されています.天然ガス,石油から精製された燃料油,石炭のほとんどは燃焼・酸化の過程を経て,最終的にはCO2(一旦純度を上げて飲料,ドライアイス,溶接などの直接的なCO2利用を介する場合を含む)となって大気へ放出されています.一方,企業・事業所等の98,933のうち,ほぼ全てのナフサ(ただし,2018年度は62.1%が輸入),燃料油(1190),LPガスを中心とした石油製品(4436),天然ガス(145)およびコークス類(430)の合計で29157(9%程度)が非エネルギーの化学用の原料として使われています.

図3 総合エネルギー統計から推計した2017年度の国内の炭素フロー
2.CO2排出削減とエネルギーのメガトレンド
排出削減の主なターゲットとなるエネルギー起源のCO2は,人口動態や経済成長に大きく影響されます.国際エネルギー機関のWorld Energy
Outlook 2020によると,2018年の世界の一次エネルギー需要(Total Primary Energy Demand, TPED)は約603
EJで化石燃料のシェアが80%,CO2排出は33.3Gtでした.現状維持や現状の各国の緩和策によるシナリオでは2040年までにCO2排出量が減少に転ずることはありませんので,持続可能な開発シナリオ(Sustainable
Development Scenario, SDS)というのを提示しています.SDSは2040年断面でTPEDが545 EJ,化石燃料シェア56%で14.8
GtのCO2排出と予測しており,発電部門における風力と太陽光発電(2088↗17479 TWh)の大幅な増加が大幅減(9849↘1951 TWh)の石炭火力を置換する「主力電源の交代」が牽引するシナリオになっています.これまでは経済成長とTPEDの増加に関係性が認められたのですが,これらを切り離し(デカップリング),SDSでは産業部門の二酸化炭素強度(1000ドルの付加価値に対するCO2排出量でt-CO2/$1000VAの単位)を2018年の0.26から2050年には0.06まで引き下げ,CO2を出さないものづくりやサービスの提供を求めています.
国内に視点を移すと,2021年10月に閣議決定された第6次エネルギー基本計画においても,政策の基本的視座である安定供給,経済的効率性、環境適合性および安全性,すなわちS+3Eと多層化・多様化した柔軟なエネルギー需給構造の構築が述べられ,再生可能エネルギーも主力電源に位置づけられています.エネルギーミックスにおいて、36~38%を目標とした再エネ(以降本稿では変動性再エネを意味するVariable
Renewable Energy、VREと略記)の大量導入のためには,発電コストの低減だけでなく調整力の確保も重要で,電力システム改革の進展と共に広域的・柔軟な調整に対応できる系統利用ルールの策定(日本版コネクト&マネージ)や,蓄電池だけでなくネガワットやデマンドレスポンスなどを含むカーボンフリーの調整力開発が進められています.一方,パリ協定のNDCとして2030年までに−46%,2050年までに正味ゼロを目指すとした現在から2030年までの延長線にはない長期目標に対し,不確実性に対応すべくあらゆる選択肢を追求する「エネルギー転換・脱炭素化を目指した全方位での野心的な複線シナリオ」の採用が取りまとめました.さらに,それを成長戦略と位置づけた長期戦略として「革新的環境イノベーション戦略」が決定され,2020年12月にはグリーン成長戦略で14の分野が発表されました.その中では低コストな水素サプライチェーンの構築に加え,CO2の再利用、すなわちCCU(CO2
Capture and Utilization)による大気放散抑制が、クローズアップされるようになりました.その内容は,余剰風力が問題となったドイツを中心とした欧州で先行するPower
to gasの動向を参考に,同時に発表されたカーボンリサイクル技術ロードマップ(2021年7月に改訂,図4)に基づいています.このような国内・国際的な方針決定から,Decarbonization(一次エネルギー源の脱化石化),Decentralization(民生部門を中心とした大規模集中型から小規模分散型システムへの移行),Electrification(輸送やものづくりを含むあらゆるエネルギー需要・効用の電化)の3点が,エネルギーを取り巻くメガトレンドになっていると言えるでしょう.すなわち,それぞれの需要端の部門での省エネはもちろん必要ですが,需要の形態を化石燃料の直接利用から電化にシフトする方向と,その電源の一次エネルギーをエネルギー変換部門か各部門での自家発電かを問わず,脱化石化する方向の二つが同時進行していくと見られ,これに合わせたイノベーションの方向性についても学術会議から提言が発表されています.CCS/CCUはこれらの総力戦の一部であり,CCUのみで全て解決できるわけではありません.CCUは「有りき」ではなく,前章のCO2排出の全体像の中で優先すべき対策技術を整理した上で,コストのみならず,既に技術的に確立している地下貯留CCSによる当面の大量排出抑制技術と合わせ,既存インフラとの適合性などを考慮した次世代エネルギーシステムへ公正な移行(Just
Transition)の観点で導入される技術と考えています.

図4 カーボンリサイクル技術の全体像
3. CCUSの出番
3.1. エネルギー転換部門のCO2排出削減技術
エネルギー計画は国家戦略の重要な柱であり,前述のメガトレンドを日本特有の制約や状況を電力中心に整理してみましょう.周囲を海洋に囲まれた島嶼国であり,現在の東アジア情勢を鑑みると陸続きの欧州のような国際連系線の実現は困難と見られ,備蓄可能なエネルギーキャリアと自立した安定な電源の確保は必要不可欠です.人口減基調ではあるものの1億2536万人(2021年7月概算値)が暮らし,世界第3位のGDPの創出に年間約1000
TWhの電力需要がありますが,そのうち2/3は東京・中部・関西電力の3社の商圏(近年の夏季ピーク需要でそれぞれ約56・26・28 GW)に集中しており,これら3社の40%は安定電源が欠かせない産業部門の需要です.国土は南北に長く,賦存量の多い北海道・東北と九州にVREが急速に導入されつつあるのですが,地産地消に利用できる揚水発電も限定的で,大消費地への広域融通も北本連系(0.9
GWに増強済み)や東西の50/60 Hz周波数変換(2027年までに3 GWに増強予定)の容量がボトルネックとなります.メガトレンドに沿ってVREを大量導入・主力化するための本質的な課題は,時空間の需給ミスマッチの解消であり,変動に対する調整力の柔軟性と輸送・再変換も考慮した余剰の安価な蓄エネ(ストレージ)が主たる解決策となります.
電化のメガトレンドから発電量を無理に押し下げる必要はないのです.火力発電は必要な時に必要な分だけすぐに出せる「柔軟性と機動力」のある調整力電源として,回転慣性の機能提供による系統全体の周波数の安定化が主な役割です.ランプレート向上,高速起動停止,熱効率の低下を最小限に留めた下げ代確保などの柔軟性向上とCO2排出削減が課題となります.火力発電のCO2の大気放散の実質的な回避は,できるだけ「入れない」「作らない」「出さない」の三つの基本対策です.これまでは,需要に対してCO2をできるだけ「作らない」ように高効率化を追求してきました.しかしながら,電力市場の自由化が進行中である現在では,発電事業者にとって新設火力は投資負担が大きくのしかかります.現在開発中のA-USC,1700
℃級のGTCC,SOFCトリプルコンバインドサイクル,IGCC/FCのいずれであっても化石燃料を用いる限り,単体では80%削減あるいは正味ゼロへの解決策ではなく,煙道から「出さない」ようにCO2を分離回収し,貯留あるいはカーボンリサイクル燃料として再利用するしかありません.後者は「入れない」対策にもなり,バイオマスのほか,石炭より天然ガス,さらに究極的には水素(キャリアとして炭素を含まないアンモニアを含む)などの利用に加えた既設火力へのレトロフィットの選択肢として位置づけられます.図5に示すように,どこからCO2を分離するかによって適した技術が異なり,コストや分離回収エネルギーも異なってきます.

図5 CO2分離回収
3.2. 需要側のCO2削減技術
需要側では徹底した省エネルギーを基盤としながらも,熱や動力などの便益・効用発生を化石燃料の直接燃焼ではなく,低炭素化された電源からの送配電あるいは太陽光などの自家発電によって同様の便益・効用を得る電化へのシフトがメガトレンドに沿っています.その上で,部門ごとには次のような技術の方向性となるでしょう.
民生部門:民生部門の需要は電化が比較的容易です.都市ガス網を利用したCCU燃料として後述するCO2フリー水素との合成メタンによる燃料電池コージェネレーションシステムも,完全に水素に置き換えるまでのつなぎの技術となりえます.
輸送部門:移動途中でのエネルギー補給が容易な陸上輸送では,旅客・貨物の種別なく近中距離を中心に徐々に電動化していくと見られますが,陸上の重量長距離トラック,航空機,長距離輸送船については電動化が困難である.微細藻類等によるバイオ燃料の利用に加え,CO2フリー水素による合成燃料であれば全てに対応できます.
産業部門:製造業の加熱プロセス については,蒸気などの200℃以下の低温度であればヒートポンプで代替可能です.それ以上の温度はいわゆるジュール熱相当の加熱となり,電源が火力中心の間は燃料の直接燃焼による熱発生よりもCO2が低減することはありません.製品の品質や歩留まりに影響しなければ電化は容易ですが,抜本的なプロセス変更を伴う場合は移行に困難が予想され,対策としてCCU燃料の利用も考えられます.
3.3. 水素とカーボンリサイクル
VREを大量導入・主力化するための重要な解決策として安価で利便性の高い蓄エネルギー技術が必要ですが,揚水発電・CAES・蓄電池など蓄電・放電の往復の効率の高い技術の他に,キャリアを選べば保存期間と容量に制約がない水素にも期待が高まっています.具体的なコストは,直近では豪州での褐炭ガス化+CCSによる水素で12円/Nm3,本命となる再エネ由来の水素コストは将来的に20円/Nm3,発電単価換算で12円/kWhが目標とされています.太陽光発電に敢えて蓄電池を組み合わせることで水電解セルの稼働率向上とkW容量の削減による製造システムを含む水素のコスト低減の可能性についても論じられており,国産の再エネ由来水素が早期に手ごろな価格に近づく可能性もあります.一方,水素以外のPower
to Xでは,CO2を分離回収して水素と合成する必要があります.無論,ΔG=−394 kJ/molの安定なCO2を燃料として再利用するには,発電で得られる以上のエクセルギーを投入しなければなりません.カーボンリサイクル技術の導入意義がCO2の大気放散抑制であることから,用いられる水素の製造・輸送・貯蔵および還元・合成プロセスにおける追加的な投入エネルギーの全てにおいてCO2フリーであることが望ましく,ライフサイクルで評価した場合にCO2排出量が実質的に削減されていなければ意味がありません.しかも将来的に化石燃料と競合できるコストまで下げる必要もあります.
プラスチックの製造は,22%のマテリアルリサイクル率 が既に確立しているため,カーボンリサイクル技術の適用先として先行的に有望であり,ポリカーボネートにおいては既に実用化されています.しかしながら,図3に示した国内の炭素フローから,燃料以外の潤滑油や有機化成品全てでも9%程度に過ぎないため,80%CO2削減の長期目標に対しては残りの燃料用途でも上積みする必要があります.家庭・業務・運輸部門など分散排出源では,CO2フリー電源による大気からの直接分離回収(Direct
Air Capture, DAC)が必要となるため,エネルギー転換・産業部門の集中排出源からのCCUによる化成品・燃料化は比較的導入のハードルが低いと考えられます.これらの技術の導入意義は,化石燃料の採掘および消費ペースを下げ,新たなCO2の大気放散量を削減することです.そのためには,同じ効用(動力や熱など)の創出において,ワンスルーの化石燃料利用よりも確実に正味CO2排出量が減少しなくてはなりません.水素あるいは水素キャリアとしてのアンモニアは直接燃焼や燃料電池によっても高効率な発電が可能であることから,水素ステーションや大容量の水素貯蔵設備からの水素専用の導管が敷設されるエリアでは炭素循環による燃料の必然性がありません.一方,LNGの受け入れ基地,調整設備および26万kmを超える既設ガス導管の有効活用も重要な視点となります.日本ガス協会の調査事業によると既設の炭素鋼・ポリエチレン管は中低圧の水素供給には問題なく,将来的には水素のみのエネルギー供給も技術的には可能と見られますが,天然ガス(=主にメタンCH4)から水素への置換における過渡期の橋渡し技術も必要と考えられます.現在,石油精製工程で得られる様々な燃料油については,図6に示す通り,これまでにC1化学としてメタノールを経由したMTG
やメタン改質等で得たH2/CO合成ガスのFischer-Tropsch法による製造技術は確立しており,メタンあるいはメタノールが基幹物質として有望です.現在はナフサから製造されている基礎化学品として芳香族のBTXやエチレン・プロピレンなどのオレフィン類も,メタンや回収CO2と水素から合成する触媒研究も多数成果が報告されています.これらの炭化水素系物質の製造過程を俯瞰すると,脱化石化とVREの大量導入に伴う電化・水素利用に立脚した将来の理想的なビジョンと現在を無理なく繋ぐために,例え初期には化石燃料であってもメタン・メタノールを原料とした製造過程にシフトしておき,徐々に回収CO2と水素から合成した基幹物質に置換していく技術経路も合理性を持つと考えられでしょう.CO2を再利用するにも地下貯留の他,何らかの形で大気放散を安定的に回避しておくことも必要です.図7にCO2からの化合物の反応と水素必要量をまとめました.量論比において0.5モルで済むシュウ酸と4モル必要とするメタンが両端であり,ギ酸(1モル)やポリエチレン(3モル)などもこれらの間に入ってきます.将来の水素のみによるエネルギー供給に最も近いのはメタン,CO2フリー水素量が十分に確保できない現状ではシュウ酸の方が有利ですが,含酸素系は燃料として低い発熱量とトレードオフとなります.水素源は真水であり,国内では容易に調達できますが,日照条件の良い海外などで海水や塩水層から汲み上げたかん水しか水源がない場合は,塩素発生回避のため脱塩処理が必要となり,追加のVRE電力を消費してしまいます.少しでも必要水素量を減らすには,CO2の還元に水素を用いない方法としてCOと1/2O2への直接電解法があり,固体酸化物形電解セルの研究開発も進んでいます.

図6 メタン・メタノールからの有機製品製造

図7 CCUの反応体系
3.4. 水素に依存しないCO2固定化法
再燃料化を含む有機系化合物への合成は,本質的にCO2固定化期間が短い欠点があります.一方,無機固定においては水素が不要でCO2固定化期間も極めて長く,地下貯留の補助的な技術と位置づけられます.無機系の場合は,炭酸イオン(CO32-)と安定的に結びつくカチオンとして岩石圏および海水中に豊富に含まれる元素が望ましく,アルカリ金属類(ナトリウム,カリウム,ただし水溶性のため不向き),アルカリ土類金属類(マグネシウム,カルシウム)および鉄などが候補です.カルシウムを例に取るとエクセルギーゼロの参照種は炭酸カルシウム(石灰石)であり,安定な物質です.消費量の多い用途としては製鋼の副原料やポルトランドセメントの原料などが挙げられますが,いずれも生石灰(酸化カルシウム)として用いるため,煆焼によって再びCO2が出てしまいます.また,強アルカリであるコンクリートが,経年変化で大気中のCO2と反応して中性化し,鉄筋の錆の元凶になることはよく知られており,廃コンクリートでもCO2を鉱物として固定化できます.セメントの特殊混和剤によってCO2で硬化させる「CO2
SUICOM」は負の排出を実現し,プレキャストコンクリートブロックなどで実用化しています.マグネシウムについてもスラグ中の鉱物の他,廃かん水からMgOを再生可能エネルギーで抽出し,固気反応で炭酸塩化して骨材等で利用
する研究開発が中垣研でも進んでいます.
4. CCUの今後の展望
リサイクルできない廃プラスチックの焼却,前述の石灰由来,農業など人工的な土地利用,長距離輸送,島嶼の電源や極寒地の暖房の備蓄燃料利用から排出される人為起源のCO2は最後まで残ると考えらます.これらに対しては,本稿で述べたCCUS以外にも,植林や緑化,バイオマス燃料+CCS(BECCS),自然鉱化・海洋吸収の人工的な促進などの負の排出技術(Negative
Emission Technologies) が正味ゼロ達成の選択肢となります.これらは淡水の他,広大な土地と肥料が必要で,局所の生物圏への影響や土地利用の変化に伴う土壌固定量の変化によるフィードバックも不明なため,確実なCO2固定量の検証が困難
とも考えられています.CCUにおいても,回収CO2由来の製品の利用あるいは廃棄まで通したLCAでの固定量を明確化する必要があります.前述の廃プラスチック850万tのリサイクル状況を例に取れば,サーマルリサイクルと単純焼却の合計69%は処分段階でほぼCO2になっていると見られ,再生樹脂の91万t(樹脂生産量1050万tの8.7%)が実質のカーボン循環です.現状の枠組みでのリサイクルの増量だけでなく,CO2を追加的に出さないCCUへ境界を拡大してもいいのです.セクターカップリングの例とすれば,高濃度のCO2を含む可燃ガスやスラグなど副生品の多い鉄鋼業との産業連携で,酸素富化高炉や転炉をスクラップの再生や廃プラスチックの還元剤としての利用を含む「循環システムにおける多機能のガス化センター」として捉え,従来の鉄鋼製品や電力・熱供給だけでなく,CCUのためのCO2原料やスラグを利用した炭酸塩のコンクリート骨材など,Polyproductionの供給ステーションとして発展させれば,サーキュラーエコノミーの観点でも重要拠点になることも可能となるでしょう.
※この記事は,OHM2012年6月号,クリーンエネルギー2010年6月号,化学工学会誌2009年9月号,電気学会誌2014年3月号への寄稿を元に加筆しました.
1.化学反応による廃熱再生とは
我々が日常エネルギーと称しているものには様々な形態があり,コージェネレーションシステムを例にとれば熱・電気・化学の3つが関与しています.経済産業省の技術戦略マップ2010でも,「時空を超えたエネルギー利用技術」として,これら熱・電気・化学エネルギーの3形態間の相互変換による質の向上や最適運用に係わる技術がマッピングされています.エネルギー3形態を議論する場合,「量:(エンタルピーの概念)」と「質:(エクセルギーの概念)」の2つの指標が重要で,それに時空を超えるための「保存」の考え方が加わることになります.燃料の化学エネルギーは,常温常圧でも高密度かつ大量に高いエクセルギー率を保存できますが,私たちが利用する熱や電気に変換されない限り,それ自体が利便性や快適性をもたらすものではありません.一方,大量に長期間保存することは苦手なるも,オール電化の普及や自動車の電動化の流れを汲めば,現代社会における最も利便性の高い形態はエクセルギー率100%の電気エネルギーです.エネルギー変換におけるあらゆる不可逆過程において否応なく発生した熱エネルギーは,いずれ環境温度と同化して無価値になることから,「廃」熱と呼ばれることになります.熱は量として不変(いわゆるエネルギー保存則)でも,温度の低下とともに取り出せるエクセルギーも減少してしまい,質の高い状態で長時間保存することが困難です.例えば,廃熱として300℃の排気ガスの電気(熱機関として取り出し可能な最大有効仕事)への変換の「可能性」はこの図によると約29%程度となります.一方,新燃料として注目されているジメチルエーテル(DME)から水素を生成する下記の水蒸気改質反応は吸熱反応で,300℃の廃熱があれば,ほぼ100%の転化率が得られます.
(CH3)2O + 3H2O(g) → 6H2 + 2CO2 122.6 kJ/molの吸熱反応(25℃での値)
廃熱から取り込んだ122.6kJ/molは,DME:1molに対する水素:6molの発熱量増分,すなわちLHV(低位発熱量)の増加率(増熱率)にして9.2%として変換プロセスの入力増に寄与することになりますが,この差分はもはや前述の29%ではなく,理論上,転換された水素のエクセルギー率である83%の「可能性」を得て高質化されます.また,温度が下がったとしても,水素という化学エネルギーの形態であれば,質を保持したままで長時間の量の保存も可能になります.水素を含む改質ガスにしたことで,この図の通り,95%であった元燃料のエクセルギー率は12%低下しており,この高質化は魔法ではありません.ただ,熱機関の上限と考えられている2000℃でもエクセルギー率は約70%で,熱機関であれ燃料電池であれ,我々は95%を生かし切る術を現在持ち合わせていないのです.それであれば,低下する水蒸気改質のプロセスと組み合わせることで廃熱の大幅なエクセルギー増進を図るというオプションも考えていく必要があり,このような化学反応を用いた熱再生システムを総じて”Chemical
Recuperation”(化学再生)と称しています.成熟・高度化した優れた省エネ技術をもつ日本は,この分野において理論と実践的な事例の双方において国際的にリードしており
,前述の技術戦略マップでも,ガスタービンコージェネレーションシステムの化学再生サイクルについては,①「総合エネルギー効率の向上」の中で政策目標への寄与が大きいと考えられる個別技術の1202Hの中に位置づけられています.
2.化学再生システムの実践事例
産業界には様々な温度レベルの未利用廃熱が多く存在し,使用される燃料も多種多様ですが,改質に必要な実用温度レベルと触媒を用いる化学再生システムに適用可能な燃料の組み合わせは限られており,こちらの図にその一覧を示しました.最も汎用な燃料はメタンを主成分とする都市ガス・天然ガスで,適用温度域は500℃以上にて実用的な反応速度による部分改質,800℃を超えればほぼメタンは残りません.すなわち,温度が高いほど排熱回収量は多くなり,それに伴って燃料消費量の削減効果も大きくなりますが,高い温度は元々エクセルギー率も高いので質の向上効果としては低下することになります.一方,含酸素燃料であるDMEやメタノールは,改質に必要な実用温度が低いために,熱から仕事への質の向上効果が高くなります.原燃料からの増熱率,すなわち質ではなく量(エンタルピー)の増分としてみれば,メタンから3H2+COを生成する反応の25.7%が最大,気化したエタノールも24%台(5%ほどは蒸発潜熱)の順になります.
外部廃熱を所内の既存発電設備の燃料に発熱量増として取り込むためには,燃料供給ラインのほか,改質器や改質ガスホルダーなどのバッファ設備への追加投資も必要になるのですが,化学再生に付随する燃料処理系を別に開発して,既存設備を最小限の改造で利用できるので,実現化はそれほど難しくないと考えています.産業炉の燃料を炉廃熱で改質するだけの省エネ技術(TCR:熱化学再生)は,米Gas
Technology Institute にて研究例があり,実現可能なレベルにあるとされていますが,現在発電用およびこのTCRも含め,外部廃熱取り込みによる化学再生システムの実例はほとんどありません.一方,1パッケージで閉じたシステムとしては比較的実証例が多く,車のエンジンや熱電併給システムの原動機排気熱を再生サイクルとして利用するだけでよいので構成がシンプルです.なお,MCFCやSOFCなどで実現される天然ガス内部改質の燃料電池は,電池で不可逆的に発生する熱を水蒸気改質で取り込んで電気へ変換している点で,化学再生システムの一つと言えます.往復動内燃機関では,日産自動車によるメタノール改質エンジンの研究があり,排気量2Lで40%を超える熱効率を達成しています.この場合,改質反応による排気熱回収のみならず,水素の燃焼速度で耐ノック性が改善するため,圧縮比を高く取れることも効率向上に寄与しています.
発電用ガスエンジンでも同様な効果が期待できるが,実証例は見あたりません.
連続燃焼のガスタービンは化学再生を組み込むのに最も適した原動機であり,コンバインドサイクル化が向かない中小型分散電源で,特に蒸気噴射による熱電比可変型の機種は最もマッチングが良い.化学再生ガスタービンの机上検討は,図の燃料についてすべて報告されています.実証試験では,中国電力・日立造船・三井造船のグループにより,NEDOプロジェクト「メタノール改質型発電トータルシステム実証試験」として,1988年から1994年にかけて1MWクラスのガスタービンによる実証試験が完了しています.
3.ガスタービンコージェネレーションシステムへの適用による燃料削減効果
大震災後,慢性的な電力不足が懸念されるなか,分散型電源として電気と熱を供給できるシステム,いわゆるコージェネレーションシステムが見直されています.電源を確保するための新規導入が今後さらに進むと同時に,既存システムの設備利用率も上がると予測されます.ところが,燃料費の長期的な上昇トレンドから,ランニングコストを抑えることはCO2対策と同時に重要な課題であり,同じ量の電気と熱を得るための投入燃料ができるだけ少ないコージェネレーションシステムが望まれます.一定量以上の熱需要があって,発生した電気+熱のエネルギー利用率が常に高い状態が理想的ですが,実際には熱需要の変動が大きく,余剰の場合は熱を捨てるか,発電効率の悪化する部分負荷での運転になります.この問題の解決策の一つとして余剰熱で生成した蒸気をガスタービン内に噴射して出力を増加させ,電力に変換する蒸気噴射サイクルを用いたガスタービンコージェネレーションシステムが商品化され,既に広く普及しています.化学再生サイクルを適用した発電システムは,蒸気噴射サイクルの特長である高い発電効率をさらに向上させることが可能で,熱と電気の出力比(熱電比)の可変幅を拡張できることから,幅広い運転モードの中から需要に合わせた最適なポイントを選択することができます.化学再生発電システムでは,燃料と水蒸気の混合ガスを触媒の入った改質器に通し,排気ガスの熱で温度を上げながら水蒸気改質反応を生じさせます(図参照).この反応は吸熱反応であり,排熱を化学的に回収します.改質したガスは水素を主成分とする混合ガスで,燃料として燃焼されますが,燃料を直接燃焼させるよりも発熱量が多くなるので発電効率が向上します.また,改質ガスは水蒸気も多く含むため,燃焼温度を抑えてNOxを低減する効果もあります.天然ガス(都市ガス)焚きが中心ですが,化学再生発電システムに適用できる他の燃料としては,メタノールやジメチルエーテル(DME)などがあり,これらについては実証試験が完了しています.
実際の運用に近い燃料消費量の削減に関する検討例について紹介します.モデルとした実在の事業所には6MWクラスの都市ガス焚き蒸気噴射ガスタービンコージェネレーションシステムが既に入っています.その実運転データを基に,化学再生発電システムに置き換えた場合の有効性として,燃料消費量の削減幅を定量的に検討しました.入手した運転データは,夏・冬および中間期として春・秋の代表的な操業日として4日分で,それぞれ1時間おき24時間分のデータ群から構成されています.現状のシステム機器構成をプロセスシミュレータ上に構築し,燃料や水などの入力と電気・熱出力を境界条件として運転データを再現します.その上で,化学再生に必要な改質器をガスタービンの出口に配置し,改質器周りの温度,圧力の状態や反応の進行によるガス組成を実験結果に基づいて合わせながら,電気と熱の要求出力を満たすように燃料流量を再計算しました.電力最大モードの運転状態である冬季の電気・熱出力の効率(低位発熱量ベース)と既存システムに対する燃料削減率の推移は図に示す通りで,12%~15%程度の削減が見込まれます.また,水の消費量も30%程度減っています.一方,熱出力が多い6時~7時(中間期と同様な運転モード)は,その効果は2~4%程度と小さくなります.これらのデータから,年間を通じて10%弱の燃料消費量の削減が見込まれると予測されます.
次世代のエネルギーとして期待されるDMEを用いた実証試験は経済産業省の補助事業において実施されました.小型化と低コスト化を目標に,排気ダクトに連結して直接加熱する改質器の開発とシンプルサイクル化した30kWのマイクロガスタービンに組み付けたDME改質ガスによる発電試験にて,蒸気噴射サイクルに対しての燃料削減効果が実証されています.化学再生発電システムは図2に示すように,ガスタービン本体の排気ダクトに蒸発器,改質器,水予熱器などの排熱回収系を直結させた構成です.改質器は,発電効率向上のための最重要機器であり,燃料と温度の組み合わせにより市販の触媒から最適なものを選定しますが,この試験では水素とCOを選択的に生成することで化学的な排熱回収量の増大を狙った白金系の触媒が用いられています.改質器では,化学反応と温度上昇による排熱回収量が性能指標となります.あらかじめ,改質基礎試験で触媒性能を把握した上で,熱,流れ,化学反応を考慮した改質器の数値解析と,プロセスシミュレータによる性能予測を繰り返して改質器を設計し,それに合わせた運転条件が選定されています.定格30kWにおける最終的な化学再生サイクルの発電効率は17.0%に達し,蒸気噴射サイクルに対して相対値で10.4%の向上が確認されています.この相対的な効率向上は元のシステムの規模や発電効率に関係なく得られるゲインですので,化学再生の適用によって放熱損失の多い小型のシステムでも10%の燃料消費量削減を実証したと言えます.
さらには,低温作動・低コストを目指した触媒についても目処が立っています.DMEの加水分解に対してゼオライトを用い,コスト高の貴金属系の代わりにNi-Cu系の触媒を混合することで,メタン生成を抑えながらも水素とCOを選択的に生成する触媒の開発も進んでおり,300℃の低温でも十分な活性を示すことが実験で確認されています(図参照).
4.化学再生システム普及への期待
廃熱が,求められるアメニティの熱として利用し尽くせるならば,なにもこのような複雑なことをする必要はなく,俗に総合熱効率と称される数値は「エネルギー利用効率」と等価です.しかし,現実には熱需要の変動を,まさに「時空を超えて」利用する技術で埋め合わせなければエネルギー利用効率は一向に改善しません.その一つのオプションとして,本記事で紹介した化学再生システムが大きく貢献できると考えています.
※化学再生を理解するには,まず熱力学とエクセルギー(総合機械の方はエンジニアリング・サーモダイナミクスと熱エネルギー工学)についての知識が必要になります.
Our original Ni-Cu/SiO2 catalyst is an ideal solution for DME chemical recuperation below 300
deg-C.![]() The reaction pathway on the surface of Ni(111) is analyzed by means of NEB method computed by DACAPO. CH3O(a)→CH2O(a)+H(a) has the largest activation barrier converting from CH3OH derived from DME by hydrolysis into H2 and CO. (Alumnus Watanabe Y., 2011) ![]() The CH3O(a)→CH2O(a)+H(a) activation barrier on Ni3Cu is larger than that on Ni. This feature strongly inhibits the methanation reaction while it also slightly reduces the H2 production rate. (Alumnus Kato Y., 2013) Special thanks to Prof. Koyama and Ogura, Kyushu Univ. |
![]() Top: Fuels, reactions and applications of "chemical recuperation" Middle: Fuel saving of CRGT-CHP system computed by Aspen HYSYS(R) Bottom: Concept of catalyst design for DME chemical recuperation below 300 deg-C This poster was presented at INCHEM2011, Tokyo |


1.待ったなしの温室効果ガス削減
IPCCのFifth Assessment Report (AR5, 第5次評価報告書)が2014年に公開されました.環境省の日本語版もSPM(Summary for Policy Makers),解説資料などが公開されており,その一部を大学院の講義「エクセルギー工学特論」で詳しく取り上げています.)人為起源の温室効果ガスの排出(特にCO2)と気候変動(Climate
Change)との因果関係について,2007年に公開されたAR4 (第4次評価報告書)から科学的根拠を積み上げて,さらに踏み込んだ表現がなされました.WG
I, II, IIIのレポート分冊と統合報告書(Synthesis Report, SYR)で構成され,SPMの4つのHeadline statementsは以下の通りです.

1. Observed Changes and their Causes
Human influence on the climate system is clear, and recent anthropogenic emissions of greenhouse gases are the highest in history. Recent climate changes have had widespread impacts on human and natural
systems.
人為起源のGHGは史上最高値で,それが気候に影響を与えていることは明白な事実である,ということです.
2. Future Climate Changes, Risks and Impacts
Continued emission of greenhouse gases will cause further warming and long-lasting changes in all components of the climate system, increasing the likelihood of
severe, pervasive and irreversible impacts for people and ecosystems. Limiting
climate change would require substantial and sustained reductions in greenhouse gas emissions which, together with adaptation, can limit
climate change risks.
このまま放っておくともっと温暖化して影響も長引きますよ,それにブレーキを掛けるには実質的かつ持続的なGHG削減が必須です,ということです.
3. Future Pathways for Adaptation, Mitigation and Sustainable Development
Adaptation and mitigation are complementary strategies for reducing and managing the risks of climate change. Substantial emissions reductions over the next few decades can reduce climate risks in the 21st century and beyond, increase prospects
for effective adaptation, reduce the costs and challenges of mitigation
in the longer term, and contribute to climate-resilient pathways for sustainable
development.
適応策と緩和策はあくまで補完的であり,ここ2~30年の実質的な削減が極めて重要です,ということです.
4. Adaptation and Mitigation
Many adaptation and mitigation options can help address climate change,
but no single option is sufficient by itself. Effective implementation depends on policies and cooperation
at all scales, and can be enhanced through integrated responses that link
adaptation and mitigation with other societal objectives.
適応策や緩和策は一つのオプションだけでは不十分で,政策とあらゆるスケールでの協力体制が重要,ということです.
※IPCCは世界気象機関(WMO)と国連環境計画(UNEP)によって設立された機関であり,UNFCCC(United Nations Framework
Convention on Climate Change, 気候変動枠組条約締結国会議COPの主催機関)に対して科学的に中立な立場でデータや助言をしています.当研究室ではAR4およびAR5で示された科学的根拠に基づき,大気へのCO2排出削減は必須の技術であるとの認識を共有しています.
2.CO2排出源と排出抑制技術
CO2の排出源はエネルギー変換部門40%,産業部門が30%です.エネルギー変換部門では火力発電からのCO2,産業では製鉄業と化学産業でのCO2排出が多くなっています.(製鉄業での対策ついてはCOURSE50,ULCOS,炭素循環製鉄ACRESなどがあります.)同じ発電量,鉄鋼生産量を得るための炭素原料の投入量を減らす高効率化は着実にやる必要があります.しかし,主要排出源は技術的な完成度が既に十分高いために,コストを掛けても高効率化の伸び代はあまり大きくありません.望まれるのは安価で大量の排出抑制策であり,集中排出源からのCO2分離回収・貯留(CCS)は極めて重要なCO2の大気放出削減オプションであると言えます.
技術史上でCCSほどその存在意義が特異なものはないと思います.まず,Enhanced Oil Recovery(EOR)やEnhanced Coal
Bed Methane(ECBM)など,CO2の圧入での地下資源の増進回収の場合や,天然ガス随伴CO2の除去,尿素プラントなどを除き,火力発電所からのCCSは基本的にエネルギーのゴミ捨てに相当しますので直接的な利益を生みません(外部不経済として電気料金に上乗せするか,税金で賄われることになるでしょう).電力会社から見れば,せっかく発電した電力や蒸気タービンを回して発電できる貴重な蒸気の熱を使ってCO2を分離回収するわけですから,やらずに済むならそれに越したことはありません.CCSの設備導入にも運転にもコストが掛かり,発送電分離,電力全面自由化という局面では極めて後ろ向きです.また,コストを支払った人々にCCSの効果として明白な実感が得られる保証もありません.特に日本でCO2を埋めても他国でその何倍も出されればなおさらです.それでも敢えてこの技術をも可及的速やかに実行に移さなければならないほど,今の気候変動のさらなる悪化とその大きな代償は切迫している,ということです.今世紀末に産業革命以前との比較で全世界平均気温上昇を2℃以内,できれば1.5℃に収めたいとの目標が2015年12月12日のCOP21「パリ協定」で採択されました.実行可能性の面で数値目標自体には必ずしも賛成しませんが,少なくとも世界が協調してCO2の排出量を削減しようとの合意に至った点では大きな前進と言えます.
さて,CCSはコストを下げなければなりません.国内CCSの科学技術から社会経済までの幅広い専門研究機関である地球環境産業技術研究機構(RITE)によれば,分離回収から貯留まで7~8000円/ton-CO2ほどかかると考えられており,そのうち60%が分離回収です.そのため,世界中の産官学の研究機関が分離回収コストを下げる技術開発に取り組んでおり,国際エネルギー機関(IEA)のGHG
Programme主催で大規模な国際会議も2年に一度開催されています.2014のGlobal CCS Instituteのレポートによれば,世界で55件の大規模CCSプロジェクトが進行中で,そのうち13件が操業中です.特に欧州,北米,中国で盛んです.例えば操業中のSleipner(北海Offshore,1996年圧入開始),Snøhvit
(ノルウェー海Offshore,2008年圧入開始)を有するノルウェーには世界最大のCO2 Capture専門の試験設備Test Center Mongstad(TCM)があり,アミン吸収法やチルドアンモニア法などが試験されています.産業界では上記のCCSプロジェクトのオペレータであるStatoil,公的研究機関にはSINTEF,大学ではNTNU(ノルウェー科学技術大学)の化学工学科があり,強力な連携が取られています.北米では(EOR)を目的としたプロジェクトが多くありましたが,2014年10月にカナダのSaskPower社Boundary
Dam石炭火力発電所において世界初の発電セクターからのCCSの操業が開始され,2015年には米国Mississippi Power 社のKemper
County Energy Facility(石炭ガス化複合発電のPre-Combustion Removal),2016年にはNRG Energy
社のW.A. Parish 発電所におけるPetra Nova Carbon Capture Project (石炭火力のPost-Combustion
Removal,三菱重工・関西電力のアミン吸収法KM-CDRを採用)の操業開始が予定されています.製鉄業からのCCSはアラブ首長国連邦のEmirates
Steel でAbu Dhabi CCS Projectの建設が進められています.
日本では頸城,申川,長岡で1万トン規模のEORや地下貯留の実証試験を経て,現在は経済産業省が日本CCS調査(株)に委託し,北海道苫小牧市で大規模なCCS実証試験事業が進められています.本事業は2015年度末までに設備の試運転を終え,2016年度より50%程度のCO2濃度の水素製造設備のPSA(Pressure
Swing Adsorption)オフガスからアミン溶液を使って分離回収し,10万トン/年の規模で地下1000mの萌別層(砂岩層)と3000mの滝ノ上層(火山岩層)の2か所に圧入する計画です.この事業は地震大国の日本において,将来の100万トン/年フルスケールの安全な海底地下CCS技術の実現を見通す重要なマイルストーンとなることが期待されています.(中垣も本事業の課題検討委員会に委員として関わっています)

2015年9月,苫小牧CCS実証プロジェクト(日本CCS調査)にて中垣撮影
また,下記の環境調和型製鉄プロセス技術開発COURSE50においても,BFG(高炉炉頂ガス)からCO2を分離回収し,H2/COの濃度を高めて高炉に再び吹き込むことが計画されており,CO2分離回収にはRITEが開発した低温再生に適した吸収液が用いられています.(中垣も本事業step2の技術評価委員を務めております)
当研究室では高温の固体吸収材「リチウムシリケート」とアミン系の水溶液を用いる化学吸収法(先進理工学部化学生命化学科の古川,鹿又,中井研究室と株式会社IHIとの共同研究体制)の2種類について,いずれも移動速度論(総合機械工学科3年秋学期専門選択,勝田正文先生と分担)を土台とする化学機械としてのアプローチで研究しています.
また,近年,吸収塔(Absorber)でCO2を取り除かれた排気ガス中にアミン溶液のAerosolや変質したNitrosoamine,Nitramineなど有害物質が大気へ放散される可能性が否定できないとの観点から,日本でも環境省より環境配慮型CCS導入検討事業(委託先:みずほ情報総研,東芝ほか)が進められ,環境影響評価のための基礎的な検討事項の整理に着手しております.(中垣も二酸化炭素分離・回収環境負荷評価分科会の検討委員として関わっております)
3.リチウムシリケート
【概要】
リチウムシリケートは固体吸収材の一種で,炭酸リチウムとシリカから焼成して作製できます.CO2との反応は
Li4SiO4 + CO2 ⇔ Li2SiO3 + Li2CO3 で表されます.
気体中のCO2分圧に依存しますが,450℃~600℃で吸収し,700℃以上で放出しますので,何度も繰り返して使用できます.
一般的な固気系のガス吸収システムでは物理系・化学系に関わらず吸収時に発熱し,逆に熱を与えることで再生・放出しますが,リチウムシリケートもそのような挙動を示します.
【開発秘話】
この材料は,中垣が東芝研究開発センターで溶融炭酸塩形燃料電池(Molten Cabonate Fuel Cells, MCFC)の研究をしていた頃に,同じ研究チームの中川和明博士らが開発していた電解質板(α-リチウムアルミネートが使われています)の耐久性向上のための代替材料「リチウムジルコネート」が発端でした.MCFCの発電試験中のCO2のマテリアルバランスが合わないことが糸口となり,失敗を転じた大発見としてプロジェクトXのような秘話があります.その後,加藤雅礼博士らによってさまざまなリチウム複合酸化物が試され,安価でかつ,安定して吸収容量の大きいリチウムシリケートの開発に至りました.基本特許は東芝が押さえており,粉体の焼成から多孔質体のペレット化に至るまでノウハウがあります.当研究室でも固有のレシピがあり,25wt%以上の吸収容量を持つペレット化した吸収材をラボで作っております.
【特徴と用途】
使用可能温度が高いため,高温で水素を生成する改質反応などと組み合わせたCO2の濃度の高い「燃焼前分離(Pre-combustion Removal)」に向いています.例えば,天然ガス改質ガスや石炭ガス化ガスの30%以上のCO2を高温のまま吸収させることで,吸収時の発熱を改質やガス化に必要な吸熱(通常は別途燃料を焚くことで賄います)を相殺できるだけでなく,平衡に支配される反応系において反応生成物であるCO2を取り除くことで反応がさらに進行する「非平衡効果」も生じます.まさに一石二鳥です.これに「ケミカルループ燃焼(Chemical
Looping Combustion, 東工大・石田先生がオリジナル)」を組み合わせた石炭ガス化について以下のポスターにまとめてあります.
固体吸収材としての特徴として吸収容量(重量当たりのCO2モル量)と温度の関係で整理しました.温度の高いところでは,炭酸カルシウムとリチウムシリケートがあり,他の低温固体吸収材に比べて吸収容量も大きいことがお分かりいただけると思います.
【研究開発】
球状ペレット化されたリチウムシリケートのCO2吸収にともなう重量変化をTG-DTA(熱重量示差熱分析)で見ると下図のようになります.この図から,吸収速度は温度,CO2分圧および吸収済みのCO2蓄積量(最大吸収量に対する相対的な飽和度・反応率,あるいはペレットの重量密度などを物理量としても表せる)に依存することが分かります.吸収速度の特性は簡単に次のように抽出できます.
温度: 550℃付近をピークに高くても低くても遅くなる.ピーク温度はCO2分圧に依存する.
CO2分圧: CO2分圧が高いほど吸収・放出の逆転温度が高くなる平衡支配.
吸収量: CO2の蓄積量とともに急速に低下する.
これらの特性は,バルク気相ー固体表面間の境界層内のCO2物質輸送,固体表面から多孔質体内へのCO2の拡散と化学反応 の2つの現象で支配されます.気相から表面に到達したCO2はペレット内部に浸透して反応しますが,実際には反応が十分に速い温度でしか利用しませんので,吸収済みとなった層がバリアとなった輸送速度(面積あたりの輸送量でフラックスとして表します.ここでは拡散現象が支配するのでCO2の濃度勾配と有効拡散係数の積で決まります)が吸収現象を律速します.これは簡易的に下記に示す未反応核モデルで精度よく記述されます.
ところで,吸収反応には大きな発熱を伴うことは先にも述べた通りです.吸収層で発生した発熱はペレット内に大きな温度分布を生じさせる原因となります.吸収速度は温度に強く影響されるので,エネルギー保存式を同時に解いて温度場と連成しなければ正確な挙動の予測はできないのではないか?との懸念も生じます.厳密にはその通りです.しかし,φ5mmの単一粒子のバルク気相ー固体表面間の温度境界層(物質輸送境界層とアナロジーが成り立ちます)における表面熱伝達と多孔質体ペレット内の熱伝導の比であるBi数は1.0以下で十分に小さく,温度分布を無視して中心温度を代表として取り扱っても,それほど大差はありません.一方で,ペレットの見かけの体積は変化しませんが,内部では化学反応に伴う溶融炭酸塩の生成などから膨張収縮が生じ,気孔率εもダイナミックに変化します.その影響の方がむしろ大きく,簡易的な未反応核モデルでも組み込むとさらに挙動を正確にシミュレートすることができます.
このように,基本となる支配方程式群に実際の物理現象に基づく妥当なモデリングによるアレンジを加えることで,マテリアルレベルでのマクロな現象の挙動(ここではペレット単体の吸収挙動)予測できるようになります.
ペレットを詰め込んだ充填層ではどうでしょう?今度はさすがに吸収反応器内の温度分布は無視できません.吸収量ゼロで均温化された充填層にCO2を含んだ燃焼排ガスが流れてきたとするとどのような挙動を示すか想像してみましょう.
まず,入口部でCO2がCaptureされ,そこの充填層の温度が部分的に急速に上昇します.排ガスは充填層から熱を奪いながら温度が上昇しますが,反応するCO2がなくなるため,中ほどに達すると反応せず充填層と熱平衡になります.充填層内では固体粒子間の熱伝導もあり,最も活性化されている領域をピークにした温度分布が生じます.出口のガスにはこのときCO2はほとんど含まれないはずです.時間が経つにつれてこのピークの領域が出口に向かってゆっくり移動していき,最終的には出口ガスのCO2濃度は急速に上昇すると予測されます.そのようなことを実験的に確認した結果がこの通りです.このような複雑な挙動が果たしてシミュレーションできるのでしょうか?
もちろんできます.まず,充填層を気相と固体層に分け,両者が熱平衡にないHeterogeneousなモデルとして扱います.
それぞれの相の化学反応に伴う質量保存,エネルギー保存,化学種(CO2)の保存を丁寧にモデル化・記述して離散化,数値解を得ることでその挙動を模擬することができます.

実際の実験装置は苫小牧の写真と同じく金属製の容器の中で外は断熱材を被っていますので中が全く見えません.また,例え中が見えたとしても,CO2は無色透明ですし,リチウムシリケートがどこでどれだけ重くなったのかは650℃では知りようがありません.世の中には高温高圧など過酷環境下で人を容易に近づけない化学機械が人知れず活躍してます.(高炉や発電所,石油化学プラントなどたくさんあります) 中身が見えないこれらの機器で生じるさまざまな現象を,リチウムシリケートを例に説明した原理原則に基づく定式化と修正モデルによるシミュレーションの結果に,内部の温度や圧力,入口出口の状態量や組成分析など限られた情報と突き合わせて考え抜くことでイマジネーション力を最大限引き出し,パズルを解くように可能性を追い詰めて現象を特定・理解していく,これこそがこの分野の醍醐味であります.ウルトラCの最先端の技術があるわけではなくOld fashionedなアプローチではありますが,このようなスキルは,一旦トラブルが生じると数億円単位で吹っ飛ぶ上述のようなプラントにおいて経験に基づく高度な判断を要求される専門職にとって必要不可欠であり,リチウムシリケートのテーマはCO2分離回収の必要性そのものの存在意義だけでなく,このような仕事のできる研究者・エンジニアを育成するための良質な研究課題の一つであるとして取り上げています.
4.アミン吸収法
(詳細は加筆中)
日本鉄鋼協会の炭素循環製鉄研究会(通称ACRES研,研究代表者:東工大・加藤之貴先生)は,高炉メーカー全社のほか,JAEA,北大,東北大,東大,東工大,京大,九大,岡山県立大,早稲田大学が参画しています.当研究室はJAEAと共同研究を実施し,高温ガス炉を用いた高温CO2電解SOECおよびIS法による水素を用いた水性ガス逆シフト反応RWGS法を還元工程とするACRESを適用した高炉と,それらを含む製銑工程全体のプロセスのASPEN
PLUSを用いた高度なシミュレーションとエクセルギー解析を担当しています.
炭素資源は無限ではありません.特に製鉄業で高炉の熱源,浸炭材および鉄鉱石(酸化鉄)の還元剤として機能する原料炭は発電用の一般炭よりも高価で可採埋蔵量も少ないと考えられています.高炉は一旦火を入れると,24時間・365日・20年以上も止めることなく連続操業されます.高炉による製銑工程を含む日本の鉄鋼業は,世界トップの省エネルギーを誇りますが,それでも膨大なCO2を排出し続けています.鉄鋼業界としても手をこまねいているわけではありません.欧州ではULCOSプロジェクト,日本でも環境調和型製鉄プロセス技術開発「COURSE50」が国プロによって実施中で,2050年にはCCSも取り入れて30%のCO2排出削減を目指しています.しかしながら,炭素(CO2)は製鉄にとっては重要な原料の一つでもあるので,ACRESでは炭素資源の循環利用を目的にCO2(化学エクセルギーほぼゼロ)を敢えて外部エクセルギーによってCO(エクセルギー率98%)に還元して高炉へ戻すことにより,再び高炉の熱源,浸炭材および鉄鉱石(酸化鉄)の還元剤として用いる概念を取り入れています.(左下の図)外部のエクセルギーには,国産再生可能エネルギー,将来輸入が期待される再生可能エネルギー由来(Power
to Gas)の水素のほか,高温ガス炉の電気による電解,950℃の熱を使ったIS法による水素など,CO2フリーなエクセルギー源を用いることを想定しています.
SOEC(固体酸化物形電解セル)は,現在,九州大学の石原達己先生の研究室で世界トップの性能が報告されています.SOECは800℃の高温でCO2電解することによって,反応エンタルピーの一部を熱で与えることができるため,ギブス自由エネルギー,すなわち電解電圧を下げて省電力で電解できるようになる利点(トータルの入力エクセルギーの削減)があります.SOECには燃料電池と同じく内部抵抗があるため,与えた電力のうち一部は熱に変換されてエクセルギーロスとなりますが,この熱は電解セルの必要エンタルピーの一部として再帰的に取り込まれるので,高温ガス炉はその残りの熱を供給すれば良いことになります.シミュレーションモデルでは,高温ガス炉からの熱取り込みが最大となるようにSOECの運転条件を決定しています.(右下の図)

CO2は高炉の炉頂ガス(BFG)の30%をアミン吸収法などで90%分離回収され,SOECあるいは水性ガス逆シフト反応(Reverse Water
Gas Shift,RWGS)で60%還元します.シミュレーションの結果,原料炭の投入量を3%~11%程度削減できることが分かりました.この成果は,炭素循環製鉄研究会の最終報告およびISIJにJAEAと共著で掲載予定になっています.
2013年12月13,14日,第9回のACRES研を西早稲田キャンパスで開催しました.
2013年11月29日,共同研究先である日本原子力研究開発機構(JAEA)大洗センターにある世界で最も進んだ原子炉:高温ガス炉(HTTR)の見学をしてきました.
製鉄所内で発生するCOG(コークス炉ガス),高炉ガス(BFG),転炉ガス(LDG)などは所内の燃料や発電に用いられていますが,それらのガスからCOのみをPSAで分離して高炉に再循環させる場合のCO2削減効果についてもJFEスチール(株)と共同で研究を実施しています.
本研究は,2015年度より日本鉄鋼協会 環境・エネルギー・社会工学部会・高温プロセス部会共同の「スマート製鉄システム研究会」(主査:東工大・加藤之貴先生,副査:東北大・埜上洋先生)として,一部受け継がれました.
炭素循環のため排出CO2の再生可能エネルギー由来の電力を利用した電気分解による炭素再資源化と,今後利用が増大するスクラップの導入に対応し,生産柔軟性が高く炭素循環機能を用いた低炭素スマート製鉄システム(Sustainable
Iron and Steel Making System based on Material Recycling Technologies,
SMART)の構築を目指すこととなりました.京都大学の山本高郁先生が旧住友金属工業時代に開発したPacked bed type Partially
Smelting Reduction process; PSR 充填層型部分溶融還元炉)をベースに,当研究室では引き続きシステム解析を中心に参画しております.
左図:評価した製鉄システムの境界と炭素投入量(=CO2排出量)およびエクセルギー評価
右図:AspenPLUSによる高炉のモデル化
さらに2019年度からは,日本学術振興会の製銑第54委員会に「物質循環製鉄システム研究会(通称:循環研)」が設置され,炭素を含む物質循環の観点で製銑工程について議論する場が形成されました(研究会代表は引き続き,東工大・加藤先生).
この動きとは別に,長年共同研究の関係にあったJFEスチールとのテーマにも変化がありました.
2020~2021年度にはNEDOゼロカーボンスチールのプロジェクト(JFEスチールからの再委託)に参画し,酸素吹き石炭ガス化炉に近い「酸素高炉」の研究を実施しました.さらに2022年度からはNEDOグリーンイノベーション基金/製鉄プロセスにおける水素活用/高炉を用いた水素還元技術の開発「②外部水素や高炉排ガスに含まれるCO2を活用した低炭素化技術等の開発」として実施中です.
加筆中
2022年3月に日本評論社からカーボンプライシングのフロンティアが発刊されました.この中で中垣は第11章「CO2分離回収・貯留・利用技術の役割と将来展望」を執筆しています.
編著:有村俊英(早稲田大・政経),杉野誠(山形大),鷲津明由(早稲田大・社学)
総頁数:A5 296ページ
価格:3,740円
同社の案内より:
文系・理系の枠組みを超えて、スマートな低炭素社会を構築するための見えざる手=カーボンプライシングの活用法が理解できる。
1部 総論
1章 カーボンプライシングの基本的な考え方と論点
2部 地域・産業と家計への影響
2章 応用一般均衡モデルによるカーボンプライシングの地域別経済効果の分析
3章 カーボンプライシングによる地域経済への影響:2015年地域間産業連関表を用いた分析
4章 CP導入に伴う地域間・世帯間格差とその是正施策
5章 カーボンプライシング制度下で省エネ対策はどのように進んだか:埼玉県目標設定型排出量取引制度の事例から
3部 再生可能エネルギー利用社会の構築に向けて
6章 再生可能エネルギー利用社会の構築に向けて
7章 次世代エネルギーシステム分析用産業連関表について
4部 カーボンプライシングと技術
8章 再生可能エネルギー時代に適合する次世代電力システム
9章 カーボンニュートラルに向けた運輸部門における地球温暖化対策の取り組み
10章 建築のスマート化と脱炭素の社会システム
11章 CO2分離回収・貯留・利用技術の役割と将来展望
5部 カーボンプライシングと社会
12章 再生可能エネルギーによる地域循環共生圏の創造とカーボンプライシング
13章 カーボンプライシングとグリーンリカバリー
14章 カーボンニュートラルに向けた室蘭市の取り組み

本書は2010年に出版された「骨太のエネルギーロードマップ第2版」(このページの下部に紹介があります)に続く第3版として,英語での執筆と世界への発信のために企画されました.2011年3月11日の東日本大震災と電力需給逼迫に端を発し,日本のエネルギーシステムは激動の時代に突入しました.3E+Sの面では,エネルギーの安定供給に貢献してきた原子力発電の震災以前のレベルへの回復は極めて困難であり,再生可能エネルギーの大量導入等で電気料金の上昇と調整力としての火力発電の出番が増えています.さらにCOP21のパリ協定を受け,温室効果ガス削減へのさらなる努力は避けられません.長期投資回収が基本のエネルギー技術分野において緩やかな変化ではなく,ある時点を機に強制的に技術の方向性を変えざるを得ない状況はこれまで経験がなく,資源のない日本がどのような選択肢とともに,1億3千万人の生活と世界第3位の経済規模を維持していくのか,世界が興味深く見つめています.2014年4月18日にキックオフ,編纂に丸2年以上費やした成書であり,編集者の4名はもとより,50名以上のエキスパートが献身的に執筆に関わり,エネルギー技術分野のかなりの部分を網羅的に収録した専門知の結晶であります.本書を読むことで,技術の現状と超えるべきハードル,さらにはその技術を取り巻く社会環境の変化を,2030年とその先まで見通すことができます.
編集者:加藤之貴,古山通久,福島康裕,中垣隆雄
ISBN:978-4-431-55949-8
総頁数:A5 560ページ
価格:199.99€(Hard Cover)

2014年11月にオーム社から公益社団法人 日本技術士会が編集した技術士ハンドブック(第2版)が発刊されました.この中で中垣はエネルギーの総論を執筆しています.
著者:公益社団法人 日本技術士会登録 技術図書刊行会 編
総頁数:A5 1050ページ
価格:10,800円
オーム社の書籍紹介より引用
「本書は2006年11月に発行された「技術士ハンドブック」の第2版です。発行後8年が経過し、各種規格の改訂や東日本大震災を契機とした安全エネルギー環境などの社会情勢の変化に合わせて改訂を行いました。また、第2版より「建設マネジメント」の章を設け、技術士の半数以上を占める「建設部門」の方により訴求する内容構成とするとともに、プロジェクトマネジメントについては、最新版であるPMBOK第5版の内容をふまえ、最新の知見を豊富に盛り込んでいます。専門分野を問わず技術士に求められる基準やベースとなる知識が横断的に把握できる内容となっていますので技術士として業務をこなしていくうえでの座右の書となる一冊です。」

2013年8月に日本機械学会から東日本大震災合同調査報告書 機械編(DVD)が発刊されました.この報告書は,他に日本地震学会,日本地震工学会,土木学会,日本建築学会,地盤工学会,日本都市計画学会,日本原子力学会が参画しており,関連学会の総力を挙げて編集されたものです.中垣は日本機械学会の東日本大震災調査・提言分科会タスクフォースのWG5メンバーとして一部執筆しています.
編集:白鳥正樹(JSME主査)小泉安郎,小澤 守(WG5 エネルギーインフラの諸問題 主査)
総頁数:450ページ
価格:8,400円
本書の特色より引用
「分科会では、各WGのメンバー諸氏による熱心な調査活動,および調査結果の分析に取り組み、WGごとの提言は今後起こるかもしれない南海トラフの巨大地震等に対する備えをするための具体的な知見を与えるものであり,まさに本分科会のミッションがこれによって達成されているといっても差し支えない。さらに各WGの提言を踏まえて,分科会としての大局的な見地からの提言をどのようにまとめていくかについて議論を行い、その結果以下の構成で日本機械学会からの大局的見地からの提言をまとめ、これに各WGの概要と提言を合わせて冊子体としてまとめた。」

公益社団法人日本技術士会から,2013年3月に原子力・放射線についてのCPD教材が発刊されています.(中垣も一部執筆しています)
書名:『原子力・放射線の整理と検討のための資料 ~3.11福島第一原子力発電所事故について共に考える~』
編集代表:桑江良明
発刊日: 2013/3
価格:1,000円
総頁数: 140ページ
※お問い合わせは日本技術士会まで.

大阪大学出版会から,2012年12月にエクセルギー理解のテキストとして最適な本が出版されています.(中垣も一部執筆しています)
エクセルギーデザイン学の理解と応用 続熱管理士教本
監修:久角喜徳・中西重康・毛笠明志
編集:「エネルギーの尺度を見直そう」製作委員会
出版社: 大阪大学出版会
ISBN-10: 4872594142
ISBN-13: 978-4872594140
発売日: 2012/12/17
価格:1,890円
総頁数: 256ページ
※大学院 「エクセルギー工学特論」の指定教科書です.

2012年3月に,東日本大震災直後の学会からの提言として反響を呼んだ化学工学会緊急提言委員会から,2011年8月~10月で36回にわたり日経新聞の経済教室のゼミナール欄に「エネルギーと技術」掲載された内容を1冊の本に纏めました.
ぜひご一読ください.
ゼロから見直すエネルギー 節電,創エネからスマートグリッドまで
編集:(公社)化学工学会緊急提言委員会
監修:松方正彦,古山通久
総頁数:160ページ
価格:1,680円
出版社: 丸善出版
ISBN-10:4621085131
ISBN-13:978-4621085134
「本書の中では,日本全体で乗り越えていかなければならないエネルギー問題に関して技術的課題や社会システム上の問題などさまざまな視点からバランスよく見解が示されている.中でも特筆すべきは,大規模な計画停電を出来るだけ回避しながら,供給不足を乗り越えるための方策についても触れていることである.エネルギー問題について多くの書籍が刊行されているが,事実に基づき中立的な観点の書籍は非常に少ない.」
「これまで」と「これから」のエネルギー,次の世代を担う子供たちが自ら考えるきっかけを持ってもらおうと企画された本です.第3巻となる「これからのエネルギーと省エネ」では,再生可能エネルギーのほか,そのエネルギーストレージとしての水素,水素を利用した発電として燃料電池について平易に図解しています.(中垣も共著)
これからのエネルギーと省エネ
―エネルギーあなたはどれを選ぶ?〈3〉
監修:岡田久典
総頁数: 39ページ
価格:2,730円
出版社: さえら書房 (2012/07)
ISBN-10: 437801243X
ISBN-13: 978-4378012438


東日本大震災による津波で,福島第一原子力発電所が事故を引き起こしました.その後,再稼働が制限される中,被災した火力発電所は急ピッチで修復され,CO2排出量は増えましたが今も震災前と同レベルの電気のある暮らしを維持できています.震災後は再生可能エネルギーばかりに注目が行きがちですが,これまでの産業や暮らしを支えてきた,またこれから当分の間まだ支えてもらわねばならない火力・水力・原子力発電は重要な基幹電源です.この本は,エネルギーの歴史絵巻から石炭火力,原子力,CCSに至るまでわかりやすく図説しています.特に,普段は見ることのできない大型の蒸気タービンの写真を中部電力のご協力の下,古巣である(株)東芝の電力システム社から提供いただき,子供向けの本としては他にあまり類を見ないものに仕上がっております.
これまでのエネルギー
―エネルギーあなたはどれを選ぶ?〈1〉
著者:中垣隆雄,嶋田泰子
監修:岡田久典
出版社: さえら書房 (2012/04)
ISBN-10: 4378012413
ISBN-13: 978-4378012414
総頁数:39ページ
価格:2,730円
コストや資源的な制約,技術障壁などをクリアできる「社会に実装可能」なエネルギー技術を積み上げ,2010年の現状認識から2015,2020,2040年を予測した数少ない書.2005年発刊の骨太のエネルギーロードマップから5年後に計画的に見直され,取り上げる技術の量も幅も広がりました.この国にはまだまだ埋もれている技術がたくさんあります.それらを結集すれば,過度に利便性・快適性を犠牲にすることなく,安定でかつCO2削減幅の大きい未来のエネルギー社会を実現可能であると数値で示されています.執筆者は化学工学会の専門家集団で,編集委員は2011年3月28日の震災後の化学工学会緊急提言のメンバーとなりました.(中垣も化学再生発電で参画しました)
実装可能なエネルギー技術で築く未来
―骨太のエネルギーロードマップ2
監修:加藤之貴,安永裕幸,柏木孝夫
総頁数: 344ページ
価格:6,825円
出版社: 化学工業社 (2010/10)
ISBN-10: 475940001X
ISBN-13: 978-4759400014
